自作EVカーで身につく実践的な「学び」
学科・学年横断型の「戦略的教育プログラム」
学生自らが製作するEVカーで「全日本 学生フォーミュラ大会」への出場を目指す~東京工科大学~
大学Times Vol.47(2023年1月発行)

1986年の開学以来、社会が求める深い教養と豊かな人間性を兼ね備えた、変化する社会で活躍し続けるスペシャリストを輩出してきた東京工科大学。2015年4月に新たに設置された工学部は、従来の工学分野をベースとしながら、「サステイナブル工学」の概念を採り入れ、21世紀に相応しい知識と技術を身につけた人材を養成している。学科・学年を横断した「戦略的教育プロジェクト」など、時代に即した教育を行う工学部、特に電気電子工学科の特色について紹介しよう。
持続可能な社会をつくる「サステイナブル工学」を追求
21世紀の諸問題を解決するために、「環境」「産業」「人間」の調和を保ちながら持続可能な社会をつくる「実学」である「サステイナブル工学」が必要とされている現在。そのため、東京工科大学の工学部では、工学的手法を基盤とする幅広い領域のサステイナブル工学を追究。学内の授業と学外での就労体験型学修を組み合わせたコーオプ教育(Cooperative Education)を必修とするなど、専門性と実践力、国際性を養うための独自のカリキュラムを展開している。
学生有志による自作EVカーで「学生フォーミュラ」挑戦を目指す
東京工科大学では、革新的かつ実践的な教育活動の一環として「戦略的教育プログラム」を実践している。工学部では現在、そのひとつとして「AIデジタル設計・新材料活用モノ作り教育プログラム」を実施。工学部の有志の学生が集まりEVの製作に取り組む通称「EVプロジェクト」は、再生可能エネルギーのみを使って走る自作EV(電気自動車)を製作し、全国から約100もの学生チームが参加する自作自動車のレース「学生フォーミュラ」へ挑戦するというもの。
電気電子工学科・高木茂行教授の指導のもと、さまざまな学科から集まった学生有志が3D CADや工作機械に加え、AIなどの技術も駆使し、工学的完成度の高いEV製作を目指す。メンバーはそれぞれ、カウル(車体カバー)、車体フレーム、パワートレイン(モーター・電気系統)のグループに分かれて開発を行う。完成度を高めるにはメンバー同士の連携が必要なのはもちろん、「学生フォーミュラ」ではまずエントリー後に静的審査と呼ばれる書類審査が必要なため、機械の構造計算や電気回路、コストの計算などの提出も求められる。また、EVを走らせるための再生可能エネルギーは学内に建てられたスマートハウスの太陽光発電と風力発電で作られたものを利用するなど、エネルギーを有効活用するための工夫を通じてサステイナブルやエネルギーの大切さも理解していく。
自動車産業は日本における基幹産業のひとつであり、CO2削減という目標のためEV化は各社が力を入れている分野のひとつ。このプログラムを通じて、バーチャルデザインやシミュレーション・解析を多用した設計、材料の開発など、企業で主流となりつつある新しい高度なモノ作りに対応できる学生を育成することが最終的な目的だ。

多岐にわたる「電子工学」分野を相互に関連付けながら学んでいく
電気電子工学科では、エネルギー、電子デバイス、通信・センサー工学など、電気・電子関連の専門知識と技術を幅広く修得することを目標としている。まずは電気・電子回路や電磁気学などの基礎を徹底して学び、それを土台、樹木で言えば根にして、その他の専門分野を関連づけながら学び知識の枝葉を伸ばしていく……というイメージだ。サステイナブル工学の視点に立った最先端技術を学び、未来につながるような「電気電子工学の新技術」を創出する力を体験的に養えるカリキュラムとなっている。
電気電子工学科の10の研究室では、電力ネットワーク系と情報ネットワーク系が連携するコンセプトのもとに、センサ系、生体系、デバイス系の研究室があり、幅広い電気電子工学分野を追究できる体制が整っている。
電気電子工学の技術は、現代社会の広範な技術分野を支え、現代社会を支えている。より社会に電気電子工学の技術は、現代社会の広範な技術分野を支え、現代社会を支えている。より社会に求められる力と知識を備えた人材を育成することをめざしている。

「コーオプ教育」をいち早く取り入れより実践的な人材の育成へ
「コーオプ教育(Cooperative Education)」とは、学内の授業プログラムと学外での就労体験型学修プログラムを組み合わせたもの。学生は、一定期間企業で働くことで、就業経験と労働賃金、大学の単位を修得するとともに、実践力や総合的な社会人基礎力などを身につけることができる。一般的なインターンシップが1~2週間と短期の事が多いのに対し、現在の工学部のコーオプ教育では約8週間と長期間に渡って就業を行うのが大きな特徴だ。
東京工科大学工学部ではこのコーオプ教育を「単位認定される正規授業」として日本でもいち早く導入し、必修科目としている。その魅力は、就業経験前の基礎学修から経験後のレポート作成、プレゼンテーションまで体系的に構成されたカリキュラムはもちろん、学生をサポートするコーオプセンターの設置や、学生への報酬の支払いを実現するなど、より実践的な力が身につくところにある。学生はこの体験を通し実践力、責任感、主体的行動力を身につけ、学修意欲や就業意識の向上につなげていくことができる。
産学協同の授業科目として単位を認定するため、大学と企業が連携してより効果的な実習内容を開発している。学内外から大きな注目を集めているプログラムだ。