大学教授×大学院生 大学教育に込めるもの、大学教育で得たもの|大学Times

大学Times Vol.13(2014年6月発行)

大学教授×大学院生 大学教育に込めるもの、大学教育で得たもの 学生も教授も実践で学びながら、患者さんに寄り添う看護を目指す

大学で看護師資格を取得し、10年間勤務したのち、再び大学院での学びを選択した鈴木佳代さん。鈴木さんを入学当初から知っている看護学部長・佐藤紀子教授と一緒に、先端医療における看護および地域に根ざした看護を学ぶことをモットーとする東京女子医科大学看護学部の学びの特徴、具体的なキャンパスライフについて話を伺った。

家族の病気を機に看護の道へ

― 鈴木さんが看護の道、そして東京女子医科大学を選んだきっかけはなんですか?

鈴木:高校生のとき家族が病気になり、看護師になりたいと思いました。もともと大学への進学希望だったので看護学部に。そして、附属の大学病院があること、看護学部単科ではなく、医学部があるので連携した学びができるのではと思い、東京女子医科大学を選びました。実際に入学すると医学部と一緒に授業を受けたり、実習も大学の附属病院だったので、学びの環境が整っているなと思いました。私の場合、卒業後も大学の附属病院に勤務することになり、勤めてからも何かわからないことがあったら、大学に行って佐藤先生に相談できたことも、大きなメリットでした。

実習と大東キャンパスでの学びが糧に

― 鈴木さんにとって大学時代に一番印象に残っていることはなんですか?

鈴木:やはり実習ですね。「ひまわりみたいな笑顔だね」と患者さんがほめてくれたことがとてもうれしかったです。

1年生のときの静岡県の大東キャンパスも思い出深いです。初めての一人暮らしで、生活をすることの大変さを知ることができましたし、ほかの人たちと協力することの大切さも実感できました。ここの大学祭は地元の文化祭と共催で行うなど、地域の人たちと触れ合う機会にも恵まれたことも、いい経験になりました。

実習のハプニングを機転でかわした先生を尊敬するように

― 佐藤先生の授業で、一番の思い出はなんですか?

鈴木:2年生の実習のときに、先生が担当教員でした。手術後間もない患者さんに、清拭と言って、お湯に浸したタオルで体をふく実習があったのですが、同じグループのAさんが、少し熱めの45〜46度くらいのお湯を持ってきてしまって…。先生が見本を見せてくれようとするのですが、熱くて熱くて。患者さんには適温に冷ましてから行いましたが、熱いお湯でタオルを絞った先生の手は後日水ぶくれになってしまいました。そのとき、叱らずに私たち実習生にも患者さんにも最適なフォローをしてくれた先生を尊敬しました。

一緒に学んでいく姿勢を伝えること

― 実習では大変でしたね。佐藤先生が学生と接するときに大切にしていることはなんですか?

鈴木:本学では1年次より実習があり、この清拭の実習でも1年生なら、初めてで慎重に行動していた可能性が高いです。2年生になり、2回目の実習で確認を怠ってしまったのでしょう。私自身も2年生なのだから温度については言わなくてもわかっているだろうという安易な考えがあり、そのようなハプニングが起こった次第です。

でも、看護学は実践が大事な学問です。同じ性別・年代で同じ病気の患者さんでも、ケアの仕方はケースバイケース。教科書通りにいかないことも多々あります。

ですから、教員だからなんでも分かっている、何でもできるというスタンスより、ときには失敗する姿を見せながら、一緒に学んでいく、そういう姿勢を見せていくことが大切だと思っています。

関心ある分野を究めるため大学院へ

― 鈴木さんは看護師として勤務したのち、大学院へ進学していますが、再度学ぼうと思ったきっかけはなんですか?

鈴木:卒業後、大学の附属病院に就職しました。最初のころは、患者さんを支えるために看護師がやらなければならないことがたくさんあることを痛感し、大学での学びとのギャップに戸惑うこともありました。そんなとき、同級生と話したり、先生に相談に乗ってもらいながら、少しずつその差を埋めていくことができました。そうすると、大学での学びや実習は、実際の看護のこの部分に生きているのだと具体的なつながりを実感できるようになりました。

附属病院に勤務後、専門病院に移ったのですが、そこで看護研究をすることに。自分で一から手探りの状態で始めなくてはならなくて、何をどうしたらいいのかわからず、先生に相談したところ、大学院に入って本格的に学んだらと勧められたこともあり、入学を決意しました。

実際、大学院で学ぶこと、国際交流も経験したことで、看護研究という自分の関心はもちろん、それ以外の分野に対する見方や考え方の視野が広がりました。

大学では体系的に看護学を学ぶことで
社会的要請に応えられる看護師を養成

― 看護師になるためには専門学校に行く手段もあります。佐藤先生が考える大学と専門学校との学びの違いはなんですか?

佐藤:看護師は一生続けられる職業です。近年の医療技術の発展と高度化、高年齢化、人々の価値観の多様化、新たな生命倫理に関する問題提起など、保健医療福祉を取り巻く大きな変化に伴って、個々に対応できる質の高い看護職者が求められています。

大学における看護教育では、これらの社会的要請に応えられる看護実践者だけでなく、研究者や教育者として看護を専門的に探究していけるための基礎教育を行っています。つまり、看護学についてより体系的に学べるのが大学です。その確かな学びをもとに働くため、大卒の看護師は離職率が低いというデータもあります。

また、大学を卒業して学士の資格を取得できることで大学院への道も開かれます。東京女子医科大学の看護学研究科では博士(前期・後期)課程があり、看護に関する理論と応用学を研究し、その深奥をきわめて、文化の進展と社会に貢献できる人材を育成しています。

親元を離れて学ぶと自立のきっかけに

― 最後に鈴木さんに高校生へのメッセージをお願いします。

鈴木:高校を卒業後、大東キャンパスで学ぶために一人暮らしを始め、自立する良いきっかけになりました。また、社会に出て看護師として働くためにはどうしたらいいのかについて真剣に考えるようにもなりました。

実際に働いてみると、自分の周りにはいなかったような壮絶な環境の中で生活してきた患者さんに接することがありました。そんなときは、大東キャンパスで、自分の地元との違いにカルチャーショックを受けたこと、その地域性に溶け込めた経験が生かされていると思うことが。近隣の大学を選ぶのではなく、親元を離れるようなところにある大学で学ぶこともいいと思います。

そして、大学で看護師の資格を取得するほうが、私のように看護学を究めたいと思い大学院に進むことも可能となるので、より選択肢の幅が広がると思います。

佐藤紀子

【プロフィール】

佐藤紀子(さとうのりこ)

東京女子医科大学
看護学部/看護学研究科教授。看護学部長
専門は看護職生涯発達学。基礎教育の学生から生涯にわたる看護師の能力開発やキャリア支援の仕組みづくりにも取り組む。博士(看護学)。

鈴木佳代

【プロフィール】

鈴木佳代(すずきかよ)

東京女子医科大学 看護学部卒業
卒業後は附属の大学病院や専門病院で10年間看護師としての勤務を経て、現在は東京女子医科大学大学院看護学研究科に進学し、看護学の研究に取り組む。