グローバル教育×グローバル入試特集【国際教養大学】|大学Times

  1. 大学Times
  2. 特集記事一覧
  3. グローバル教育×グローバル入試特集【国際教養大学】

大学Times Vol.21(2016年7月発行)

グローバル教育とグローバル入試の実際とは

【国際基督教大学(ICU)】
生きた英語を活用し、対話の中で生涯学び続けるための姿勢を学ぶ

献学当初からリベラルアーツを実践し、国内外でアカデミックに活躍する人材を多く輩出してきた国際基督教大学(以下、ICU)。ICUの学生が4年間の学びの中で、海外からも広く受け入れられる人材に育っていく要因は何だろうか?ICU教養学部長の伊東辰彦教授にお話を伺いながら、その秘密を探ってみたい。

リベラルアーツと英語教育

貴学では、文部科学省スーパーグローバル大学創生支援(SGU)の施策の一部に位置付けられている、リベラルアーツ英語プログラム(ELA)を実施されていますが、どんなプログラムなのかを教えていただけますか。

ICUを語るうえで欠かすことができない特徴的なプログラムがELAです。1年次の大半を費やして、英語で思考力を身につけることに重点を置き、独創的、批判的、主体的に考える力を身につけていきます。高校までの英語は受身的な学びが中心ですが、ELAではコミュニケーションツールとして英語を実際に使いながら学びます。毎日英語に触れるので、英語へのアレルギーがなくなり、研究や論文執筆を行うための学術的な英語の技能が自然に身についていきます。

従来の一般的な大学の英語コースなどでは、英語を読解することが英語教育だとされてきました。しかし、実社会や学術の世界で英語を活用するための十分なスキルが身につかなかったのではないでしょうか。ICUのリベラルアーツでは、様々なトピックを英語で読んで、英語でディスカッションします。英語のために英語をやるのではなく、いろいろな知識を得たり、他者と対話したりするために必要になるから英語を使っています。

私も1974年にICUに入学しましたが、入学当初いきなり「広告宣伝」の論文を英語の教材にして学ぶことになったことをよく憶えています。日本の英語教材とは全く違う、本物の生きた英語での学びでした。ICUでは、その当時と基本的な教育方針は変わっていません。現在は、人権問題や安楽死、環境やジェンダーといった今日的なトピックを読んで、みんなでディスカッションしています。こうした経験を繰り返ししていると、社会に出てもすぐに戦力になります。

入学してくると最初は驚くかもしれませんが、やろうと思えばできるものです。英語の文法は高校で習得しているし、辞書だってひけるわけですから。ここでギャップを感じてしまうことに、日本の英語教育の問題があるのかもしれません。ICUでは英語を使った学びを毎日実施しますから、最初はきついと思いますが、多くの学生はちゃんとついてきます。そして、TOEFLなどの外部試験の得点も自然に上がっていきます。本当に使える英語を教えているからです。学期の終わりには、英語でエッセイを書いてもらいます。いきなり書くのではなく、準備運動を十分にして何度もやりとりしながらそこにたどりつきます。

国際基督教大学(ICU)

国際社会の情勢に対応した
質の高い学び

生きた英語を活用した学びを実現するために、意識されていることはあるでしょうか。

単純に考えれば、英語で授業をする機会を増やすということになるのかもしれません。しかし、私は100%英語でやる必要はないと考えています。日本語で最初に知識を入れたほうが早く身につくことも当然ありますし、単純に100%英語にすればいいかと言えばそうではありません。

私が実施している具体的なこととしては、授業の言語は日本語だが、使っている教材は英語とか、もちろんその逆もあります。ICUでは日本語と英語、どちらで行う授業なのかを明記しているのですが、日本語としている授業にも英語の教材が登場することが当然あります。

例えば、日本語の授業を聞いていて、あるトピックをインターネットで調べてみたら文献は英語で出てくることもあります。社会に出たら、「英語の文献が読めなかったからわかりませんでした」なんて言い訳になりません。必要な文献が英語なら英語を読めばいいし、フランス語ならフランス語を読めばいいはずです。ただ、ICUは小さな大学ですし、あらゆる言語に対応していては、際限がありません。英語と日本語でたいていのことはできるという判断のもとで、現在の形になっています。

現実に即して考えて、全ての授業を英語だけにすると、どこかで無理が出てくるのではないでしょうか。教員が作成できるレベルの英語に合わせて、教材自体のレベルを下げてしまうということになりかねません。

英語以外の第三言語の習得については、どのように考えていますか。

世界の状況を見れば、第三言語の習得は当然です。まず日本人は、日本語ができます。日本語ができるというのは、世界的に見ればものすごい財産になります。英語は仕事をするために、どこに行っても必要になってきます。しかし、行く場所によっては英語が通じないこともあります。そうした意味では、もう1か国語できたほうがいいというのは当たり前のことですし、積極的に実施しています。日本語と英語だけで忙しいので、カリキュラム的には厳しいですが、やる気があればできます。

ICUのアプローチとして、ほかの大学と違うところは、第二外国語というくくりではなく、「世界の言語」という位置づけです。アラビア語やスペイン語、中国語など9言語が開講されています。少規模の大学としては、結構充実していますし、ICUには語学が好きな学生も多いです。リベラルアーツの基本はコミュニケーションですから、コミュニケーションにつながる世界の言語について、学生の関心が高いというのは当然かもしれません。

日本語と英語は上級までいってほしいですが、もう一つの言語は中級くらいで、ある程度コミュニケーションできたり、ライティングができたりするだけでも十分ですし、学術レベルの文献を読みこなせるようになれば、かなり役に立つでしょう。

教育を面でとらえた教員への
バックアップ

ICUのように質の高い教育を学生一人ひとりに提供していたら、先生方の負担も相当なものだと感じますが、教員に対するバックアップなどもされているのでしょうか。

教員に対しては、SGUの取り組みの一環でもある「学修・教育センター」で、ファカルティ・ディベロップメント(FD:教員育成)や、ICT(Information and Communication Technology)を活用した効果的な授業運営について、きめ細かに支援しています。また、授業運営にどのようなサポートが必要かを日々検討していて、教員のITスキル向上や授業の改善を促して、教育の質をさらに高めていく試みが日常的に実施されています。

学修・教育センターは、従来、線で結ばれていた機能から、面でとらえた教育支援体制を作ることが目的です。ICUの各プログラムとリンクしており、SGUを利用してICUの持っているものを進化させて、さらに教育効果を上げようとしています。しかし、教育体制においてこれが決定打というものはありません。その時々の状況に合わせて、方法論自体を日々考えていかなければなりません。ICUが明日の大学といわれるのは、そういうことです。

母国語においても大学レベルの教育を

SGUの取り組みで、他にも実施されていることはありますか。

2017年度からユニヴァーサル・アドミッションズがスタートし、現在よりさらに多様な教育背景や語学運用能力を持った学生の受け入れを目指すことになります。それに伴い、2017年4月からグローバル言語センターを設立して、日本語と英語の教育を統合的に運用する予定です。これまでは、日本語教育と英語教育を分けて運用していたのですが、なぜ統合するかというと、日本人だから日本語ができるとは限らないからです。「あなたは本当に日本語ができますか?」と聞かれて、自信を持って「はい」と答えられる日本人は少ないかもしれません。日本語が正確にできるかどうかを、きちんと調べたことがある人が少ないからです。同じようにアメリカ人が本当に英語ができるかといえば、できる人もいるし、できない人もいるというのが現実です。ですから日本語や英語がどのくらいできるかを調べて、自分の現在の力を知ることが重要です。

グローバル言語センターでは、教員が学生にアドバイスしながら、日本語・英語両方の力を伸ばしていきたいと考えています。アメリカでは、こうした考え方は当たり前です。彼らは、母国語だからといって英語ができるとは考えていません。なぜかと言えば、アカデミックな英語は日常の言葉とは違うからです。ですから、母国語の英語の教育もきちんとしていますし、英語で記述するための論文教育も実施しています。こうした力は、訓練しないと身につきません。

日本の学生においても、日本語を訓練したうえで論文指導しないと本当の意味で学術的な論文は書けないでしょう。大学で学んでも、きちんとした文章が書けない人も世の中にはいます。それは学生の責任というよりは、学生の日本語力を測りそれを磨いていく体制が整っていないためだと考えます。

日本語にしても英語にしてもICUは、大学レベルということを意識しています。大学レベルのアプローチができる人を育てるために、プログラムや授業を実施しています。ですから大学で習ったら、それでおしまいではありません。ICUで実施するプログラムや授業を通して、生涯学んでいくための土台を築くのがリベラルアーツです。そういう意味でICUは、世界や社会に羽ばたいていくための“Gateway”です。入って終わりになる大学ではなく、生涯にわたって、ずっと学んでいくための姿勢をきちんと身につけるための大学がICUです。