【グローバル系大学特集】スペシャルインタビュー 国連大学|大学Times

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大学Times Vol.40(2021年4月発行)

【グローバル系大学特集】スペシャルインタビュー 国連大学

新型コロナウイルス感染症によって、私たちは一国の災禍が瞬く間に世界中に拡散するという現実に直面した。グローバル化が加速し、今後も地球規模の問題が起こることは避けられないであろう。難題解決には先ず、皆が自国の利益に偏らない広い視野に立って考え、英知を結集して行動しなければならない。2020年現在、世界193カ国が加盟し国家間の諸問題について調整を担う国際連合の役割は大きいが、アジアで唯一の国連研究機関、国連大学本部は東京にある。国際研究機関の最前線で活躍する国連大学サステイナビリテイ高等研究所の福士謙介氏に話を伺った。

国連大学サステイナビリテイ高等研究所
アカデミック・プログラム・オフィサー 福士 謙介(ふくし けんすけ)

東京大学未来ビジョン研究センター 副センター長(兼任)
教授研究はヒ素汚染物質の浄化、環境微生物学、メンブレンバイオリアクター、微生物燃料電池、重金属汚染土壌の浄化、汚水の生物学的浄化、水系感染症、気候変動影響等。
1989年東北大学工学部土木工学科卒業、1991年東北大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了、1996年米国ユタ大学大学院工学研究科土木環境工学専攻博士課程修了、Ph.D.取得
同年東北大学助手(工学研究科)、1997年東北大学講師(工学研究科)、1999年アジア工科大学講師(JICA専門家として派遣)、2001年アジア工科大学准教授、2001年東京大学助教授(環境安全研究センター)、2005年東京大学サステイナビリテイ学連携研究機構助教授を経て現職

国連大学本部はなぜ日本にあるのか

1968年、国連のウ・タント事務総長(当時)が年次総会で「国連憲章に定める平和と進歩のための諸目的に合致した国際連合大学」の設立を提案しました。その後ユネスコと協力して調査を行う専門家委員会を任命、報告書を提出し、1972年の国連総会で国連大学の設立が正式に認められました。当時、日本政府と東京都が手を挙げて大学本部設立のサポートを行い(現在の国連大学本部の土地は都有地)、アジア唯一の国連機関として1975年に研究活動をスタートしました。当初は、「世界の飢餓」「自然資源」「人間と社会開発」を重点分野として研究が進められ、40年余を経た現在は、次の3つに再構成しています。
①平和とガバナンス
②世界の社会経済的開発、インクルージョン
③環境、気候とエネルギー

現在は世界12カ国に14の研究所があり、私の所属するサステイナビリテイ高等研究所(UNU-IAS)は東京を拠点としています。国連で採択された政策を分析するなど、サステイナビリテイ(持続可能な)とその社会的・経済的・環境的側面に注目しながら、政策対応型の研究と能力育成を通じて、持続可能な未来の構築に貢献することを目的としています。大学という名称ですが学部はなく、現在は大学院の機能をもつシンクタンクです。

世界市民の健康で安全な暮らしのため
「都市の中の水」の価値を研究

私は都市部における水(河川や運河、上下水道など)が価値を持っているかを研究・分析しています。ここでいう価値とは、河川や生活用水の水質と、台風や大雨などの自然災害による洪水被害の予測などがあります。安全が担保されない都市には、投資をすることもできません。たとえば水道水が汚染されると病原微生物が繁殖し、生命に危険を及ぼします。これは上水道のパイプに穴が開き、漏水率が高くなることで発生する汚染です。東京の漏水率は3%ですが、途上国は50%あります。日本の高い技術を途上国へ、という考えもありますが、日本の水道は公共事業のため、マネジメントが得意でないという欠点があるのです。その点、フランスやイギリスは民間企業が運営しており、ダム建設から蛇口まで20~30年のビジネスプランに基づいた開発整備を行っているので、技術を丸ごと途上国に輸出することも可能なのです。

水環境が良くなければ住民のQOL(生活の質)も保たれず、観光業などのビジネスもうまくいきません。都市部の水質が保たれ、大雨などによる洪水が起こらない安全な社会は、世界市民の権利なのではないかと思います。私たちが国連機関として行っているのは、ヒューマンセキュリティを考え、国が求めている指標と個人の権利の枠組みを作ることです。その中で、これまでの都市河川の問題事例も紹介しています。日本には高度成長期の工場排水等【公害】の歴史があり、途上国へのメッセージにもなっています。さらに私たちは「水の価値」に関する報告書をまとめ、シンポジウムも開催しています。現在、社会開発は民間ベースで行われており、国連では民間の資金力と技術力とを連携して推し進めています。

グローバル社会に必要な
「公用語」と「男女バランス」

アカデミックな分野は基本的にグローバルで行っており、私も研究論文はほとんど英語で作成しています。研究者の分野において、グローバル人材は親和性が高いと思います。しかし現在、英語を公用語としている日本企業はごくわずかしかありません。それでは世界から多様な人材が得にくく、さまざまな考えが入ってこない企業になってしまいます。また東京大学で女性研究者の割合を増やすという取り組みは、平等という観点だけでなく、男性に偏っていると画一的になり、新しいアイデアが出てこなくなるという問題が起こるからです。女性と男性とのディスカッションの中から、まったく新しいイノベーションが出てくることを期待しているのです。

国際社会で活躍するために
大学生のうちに身に付けたいスキル

将来、国連などの国際機関で活躍したい人は、次のスキルを大学で積極的に身に付けてください。

①英語でのコミュニケーション能力
国連の公用語は6カ国語(アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語)に拡大されましたが、会議はすべて英語で行われますので、英語力は必須です。

②一般的なコミュニケーション能力
人ときちんと話せるか、知らない人の中で自分の意見が整然と言えるかなど、意識して「話す」「聞く」スキルを磨きましょう。国際的に活躍したい場合、フォロアーも必要です。

③広い教養教育
ここでいう「教養」とは、育った環境をベースに、その文化に依拠した深く広範囲な教育のことであり、国際社会では高い教養が求められます。国連大学の職員には「ナショナル・オフィサー」というカテゴリーがあります。職場の位置する国の文化的背景を理解し、うまくコミュニケーションをとりながら仕事をする職務で、国連大学では日本人が担っています。国際社会では、日本人が「日本のことをよく知っている」というスキルが求められます。日本は広く、方言だけでもたくさんありますが「コンテンツが多いのは誇り」と受け止めて、ぜひ取り組んでください。

このように、グローバル社会で活躍する人材育成には大学での学びが重要であり、語学だけでなく教養教育やコミュニケーション能力も大切な要素のようだ。次ページからの青山学院大学、ICU、東京外国語大学、上智大学、神田外語大学、学習院大学、国際教養大学のインタビューをご覧いただきたい。