グローバル系大学特集スペシャルインタビュー
世界とつながる国際ビジネスの“使えるツール” ジェトロ(JETRO)の使命とは~日本貿易振興機構(ジェトロ)~

大学Times Vol.50(2023年10月発行)

【グローバル系大学特集】スペシャルインタビュー 日本貿易振興機構(ジェトロ)

不安定な世界情勢が物価高騰に直結する事態に見舞われている。私たちの生活は、燃料をはじめ食糧や日用品など国内調達だけでは成り立っていない。貿易やグローバルビジネスは一見縁遠いと思われがちだが、実は生活者に直結した基幹産業であり、政府も貿易振興を後押ししている。今回は日本企業の海外ビジネスをサポートする独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)の小栗道明氏に、日本における国際ビジネスの現状と専門人材の育成について伺った。

独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)
総務部 次長 小栗 道明(おぐり みちあき)

【独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)】
1951年大阪で発足した財団法人海外市場調査会に始まり、1958年特殊法人化、2003年の行政改革により経済産業省所管の独立行政法人となる。民と官の間に立ち、政府関係機関としてスタートアップの海外展開、高度外国人材の活躍促進、地方創生への貢献など、日本企業のグローバルビジネスを多角的にサポートしている。経済産業省から4年ごとに事業目標が示され、本年4月からの第6期中期計画は次の4つを掲げている。
①資本・技術・人材が国内外で循環するエコシステムの形成強化
②農林水産物・食品の世界展開の促進
③中堅・中小企業の海外展開支援
④日本企業の海外進出共通の課題への対応

時代が変わっても世界とつながり日本経済の成長を橋渡し

かつては「日本は貿易立国、世界と仲良くしなければいけない」と学校の授業でも教わりました。2000年頃までは貿易黒字の拡大による日米貿易摩擦もあり、当時の日本政府は輸入促進によって国際協調を図ろうとし、ジェトロでは輸入車や輸入住宅の輸入促進にも取り組みました。その時代によってジェトロの役割は変化しますが、日本と世界とつなぐ橋渡しをして、日本の経済成長にいかに貢献していくか、という使命に変わりはありません。現在は円安も進む中で、輸出促進や対日投資促進をはじめさまざまな活動を行っています。

海外に『道の駅』を作るイメージで周辺産業を含めた輸出提案を促進

貿易や海外ビジネスは「敷居が高い」と言われてしまいますが、全国の生産者と世界の消費者をつなげるプラットホームの役割は、海外に『道の駅』を作るようなイメージです。その窓口をジェトロが担い、日本企業と海外事業者を繋げています。具体的には、海外の消費者の声やバイヤーの意見を調査し、海外のマーケットが何を欲しているかをもとに、日本製品を提案しています。

例えば、昨今は日本酒に人気が集まっていますが、一緒に相性の良いシーフードのメニューやレシピを提案することで、周辺産業(農林水産物や加工食品、調味料など)も含めた輸出促進を図っています。また、訪日外国人も拡大していることから、インバウンド促進の政府機関・JNTO(国際観光振興機構)と連携し、「日本で食べた料理や酒が美味しかったので、自国でも楽しみたい」というニーズを捉え、輸出促進につなげられるよう取り組んでいます。このように日本の製品がより多く海外市場に受け入れられるようさまざまな取組みを行っています。

円安は輸出産業の大チャンス
中小企業の海外ビジネス展開を後押し

円安は悪いことばかりではなく、日本製品の輸出の大きなチャンスでもあります。現在は経済産業省と共に、初輸出や新たな海外市場を模索する日本企業1万者を募る支援プログラム(写真参照)を実施しています。各地の自治体や商工会議所と協力してPRを行ったところ、既に8千者余りがエントリー、今年度中に政府の目標を達成する見込みです。これまでは輸出に関心がなかったり、躊躇していた全国の中小企業に対して、新たに輸出にチャレンジするためのサポートを関係機関と共に行っています。コロナ禍を経て、eコマースでモノを売るインフラが整ったことで、地元に居ながらオンライン商談が出来るようになり、出張期間や渡航費用などの心配なく、海外ビジネスにチャレンジが可能になりました。今は抹茶やゆずなど、日本の伝統食材が世界的にブームとなり、海外にマーケットが広がっています。海外で日本製品の何が受け入れられるのかは未知の世界で、思わぬ活用から地場産業の付加価値に気付くきっかけにもなっているのです。人口減少によって国内産業の縮小が免れない中、いかに地場産業を維持発展させるか、そのヒントが「海外に目を向けること」だと確信しています。

日本貿易振興機構 Webサイトより

これからは日本の全員がグローバル人材
国内でグローバルに活躍する道も

最近は授業の一環で高校生が地元企業とコラボレーションし、新商品を開発するケースもみられますが、その際には是非、海外で売ることも視野に入れてほしいと思います。売り先検討のための対象国や人々のことを調べる学習が、世界について考えるきっかけになりますし、その商品の強みを知る機会にもなります。高校教育を通じてグローバルな視野を広げることにもなるでしょう。今やどの産業分野も、日本だけで完結することはあり得ません。グローバルな発想を持って活躍することが不可欠で、海外に行かずとも国内に居ながらにしてグローバルに考え、グローバルな人たちと一緒に仕事をすることが当たり前になっていかなければ、今後の産業発展はないと思います。

日本中で貿易の専門人材を育成しスタートアップの海外展開サポートを目指す

通関士(国家資格)は、大手物流企業や商社向けの特殊な資格でしたが、貿易業務のできる人材が地方に少ないことから、今後は中小企業でもこのような資格を持った専門人材の育成が求められます。さらに貿易実務検定(民間資格)は、全国の金融機関から当機構に出向している職員にとっても、地元に戻って中小企業の海外ビジネス支援に活用するための目標の一つともなっています。

これからはスタートアップを目指す若者も多くなると思いますが、ジェトロでは意欲ある若者の起業を支援するプログラムも行っています。創業時から海外展開を視野に入れた“ボーングローバル”のスタートアップとして、積極的にチャレンジしてもらいたいです。

ジェトロは47都道府県すべてに事務所があり、国際ビジネスを支援しています。さらに、地域の大学とも連携し、地元で国際的につながるグローバル人材育成のお手伝いをしています。経済分野の公的機関の中で、世界をつなぐ唯一無二の存在がジェトロです。モノを売るだけでなく、日本の優れた教育やサービスを海外展開するお手伝いもしていますので、国際ビジネスの“使えるツール”として、知ってもらえれば有難く思います。